パンプキンマン

　夜の街は大騒ぎ。白いシーツお化けに、ヘソ出し魔女、それにパンプキン。蝙蝠だっています。それに吸血鬼も！　ロウソクを片手に駆け回る少年。シャンパンを頭からかぶっては大喜びの学生たち。「トリック・オア・トリート！」あっちでもこっちでも、歓声が上がります。さすがに子供嫌いのロジャーおじさんも、この日ばかりは、きっと、苦虫を噛み潰したような顔で、キャンディを配るのです。想像しただけで、愉快な気分になります。
　……トントン
　扉をノックする音。どうやら、子供たちがやって来たようです。山盛りのケーキが扉の横に置いてあります。この家のローラおばさんは、とても気のいいおばさんなのです。誰が来たって、大喜びでお菓子を配って回ることでしょう。
　……トントン
　ノックの音がもう１度。しかし、ローラおばさんは出てきません。どうしたというのでしょう。
「トリック・オア・トリート！！」
　待ちきれなくなった子供たちが、大声で叫ぶ声が聞こえます。みんな、ローラおばさんの手作りケーキを楽しみにしているに違いないのです。
「トリック・オア・トリート！！　ローラおばさん！！」
　しかし、待てど暮らせど、ローラおばさんは出てきません。何ということでしょう。やがて、子供たちは残念そうに、帰って行ってしまいました。

　ローラおばさんの寝室には、カボチャ人間が転がっていました。カボチャのランタンを頭にかぶったネグリジェ姿の女の人。その胸には、深々と刺さった血まみれのナイフ。ああ、可哀想なローラおばさん。こんな素敵な夜の日に、シリアルキラー・パンプキンマンの最初の犠牲者になってしまったのです。じわり、じわり、じわり。真っ白い絨毯が、赤い血で染まっていきます。

　トリック・オア・トリック！！

　壁にはペンキで殴り書き。扉の脇には、焼きたてケーキ。外はお化けの大行進。ハロウィーンの夜は始まったばかり！！