バプステーゼル

[キリスト教]

【言語】バプステーゼル(Bapstesel)《教皇ロバ》【中世ドイツ語】
    パプステーゼル(Papstesel)《教皇ロバ》【ドイツ語】
【出典】ルター&メランヒトン『二匹の驚異的なカトリックの怪物について』ほか

ローマ教皇を嘲笑うルターとメランヒトンの怪物

バプステセル

(Martin Luther & Philipp Melanchthon『Deuttung der czwo grewlichen Figuren Bapstesels czu Rom vnd Munchkalbs zu Freyberg ynn Meysszen funden』より)

1523年、ルター(Martin Luther)とメランヒトン(Philipp Melanchthon)が教会を批判するために作成した小冊子『二匹の驚異的なカトリックの怪物について』に、驚天動地の怪物が二体、描かれていた。ひとつは女性の身体を持ち、左腕は人間のものだが、頭部はロバ、右腕はゾウの鼻のようで、右脚はウシ、左脚はワシになっている。全身、鱗で覆われていて、腰からはドラゴンの頭とサテュロスのような老人の頭がにょっきりとはえている。何とも不可思議でグロテスクなこの怪物である。これは腐敗した教会を象徴していて、ロバの頭は愚かな教皇を表し、女の胸と腹は欲望だらけの教会組織を表しているなど、かなり過激な内容になっている。ちなみにバプステーゼルの背後に描かれているのはテヴェレ川の河岸に建つサンタンジェロ城で、ここは教皇が要塞として使っていた城である。もう一体は、たるみきった皮膚を持つ坊主頭の男性の首を持った二足歩行のウシの怪物。これはMunchkalb(ミュンヒカルブ)と呼ばれる《修道士仔牛》で、これも当時の修道士たちを、外見は宗教家を装いながら、中身は獣のような存在であると風刺しているのだという。

メランヒトンによれば、このバプステーゼルという怪物は、1496年の洪水のときに、ローマを流れるテヴェレ川の河畔で死体が発見されたという。このバプステーゼルの死は、すなわちローマ教皇政治の終焉を暗示しているというのである。