ガアプ

[魔法書文献]

【言語】Gaap(ガアプ),Tap(タプ)【ラテン語】
【容姿】角をはやした悪魔
【特徴】哲学や一般知識を教える。他人の使い魔を奪う。テレポーテーションさせる。
【出典】『ゲーティア』『デーモン偽君主国』ほか

4人の王を引き連れて出現する悪霊!?

ガアプは魔法書『ゲーティア(Goetia)』やヨーハン・ヴァイヤー(Johann Weyer)『デーモン偽君主国(Pseudomonarchia Dæmonum)』に名前を挙げられている悪魔。『ゲーティア』は72匹の悪霊を召喚する方法について詳細に記述された魔法書であるが、それによれば、彼は地獄の悪霊66個隊を率いる総統かつ大公だという。太陽が従属宮にあるときに、4人の地獄の王たちを引き連れて出現するという。彼は人間を無感覚で無教養にすることもできたし、一般知識や哲学に関して物知りにすることもできた。また、人間たちの間に愛憎を引き起こしたり、他の魔術師が使役している使い魔を奪い取ってくることもできた。意のままに術者をテレポーテーションさせることもできたという。もともとは第6位の能天使(パワー)の地位にいた天使だったが、ヤハウェに反逆して悪魔になったという。

この悪魔が哲学と一般知識を教えてくれるというのは重要なポイントだ。実は中世の神学を学ぶ学生たちにとって、自由七科(文法学、論理学、修辞学、幾何学、数論、天文学、音楽)の習得は必須項目だった。これらの自由七科は神学を学ぶための予備学として位置づけられており、まずはこの自由七科を学び、その後、それらよりも上位の哲学を学んだ上で、ようやく神学を習うことができた。従って自由七科の知識を教えてくれるガアプは、術者にとって非常に貴重な存在だったし、ましてや哲学を教えてくれるのだから、悪魔に知識を教示してもらって試験をパスするなんてのは、ズルではあるものの、しかし非常に重宝されたことだろう。『ゲーティア』の悪魔たちが学問を教えてくれるのは、こうした学生の要望を反映しているのである。

以下、『ゲーティア』を引用する。

(33.) GAAP. - The Thirty-third Spirit is Gaap. He is a Great President and a Mighty Prince. He appeareth when the Sun is in some of the Southern Signs, in a Human Shape, going before Four Great and Mighty Kings, as if lie were a Guide to conduct them along on their way. His Office is to make men Insensible or Ignorant; as also in Philosophy to make them Knowing, and in all the Liberal Sciences. He can cause Love or Hatred, also he can teach thee to consecrate those things that belong to the Dominion of AMAYMON his King. He can deliver Familiars out of the Custody of other Magicians, and answereth truly and perfectly of things Past, Present, and to Come. He can carry and re-carry men very speedily from one Kingdom to another, at the Will and Pleasure of the Exorcist. He ruleth over 66 Legions of Spirits, and he was of the Order of Potentates. His Seal is this to be made and to be worn as aforesaid, etc.

(33)ガアプ:序列33番目の悪霊はガアプである。彼は偉大なる総統であり、強力な大公である。太陽が南方の宮(サイン)のいずれかに入ったときに人間の姿で現れる。4人の王たちを引き連れていて、まるで4人の王たちを先導する案内人であるかのようである。彼の職能は、人間を無感覚で無教養にすることである。また、あらゆる哲学及び一般知識に関して、人間を物知りにする。彼は愛や憎しみを引き起こすことができ、彼の王であるアマイモンの支配に属する悪霊たちを浄化する方法も教えてくれる。他の術者の使い魔を解放して引き渡すことも、過去、現在、未来の出来事について偽りなく、完璧に教えることもできる。術者の意のまま望みのままに、ある王国から別の王国へと物質をたちどころに移動させたり戻したりできる。彼は66個の悪霊の軍団を率いていて、かつては能天使の地位にいた。前述のとおり身につけるべき紋章はこれである。

(S. L. "MacGregor" Mathers & Aleister Crowley『GOETIA』より)

南方のサインとは?
『ゲーティア』にある「南方のサイン(Southern Signs)」というのは占星術の言葉で、黄道十二宮のうちの天秤宮、天蝎宮、人馬宮、磨羯宮、宝瓶宮、双魚宮の6つの宮を示している。別名、服従宮(Obeying Signs)とも呼ばれている。太陽が一番弱くなる冬至を中心に前後3か月の領域がこの服従宮である。これに対応するのが北方のサイン(Northern Signs)で、これは白羊宮、金牛宮、双児宮、巨蟹宮、獅子宮、処女宮の6つの宮を示している。服従宮とは逆に、太陽が一番強くなる夏至を中心に前後3か月の領域を指す。別名で命令宮(Commanding Signs)と言う。『ゲーティア』でガアプが出現する条件として示されている「太陽が南方の宮(サイン)のいずれかに入ったとき」というのは、1年間の中で相対的に太陽の力が弱まる6か月間はガアプを召喚することができるということを意味しているのだろう。