シヴァ

[ヴェーダ神話][ヒンドゥー教]

名称 शिवŚiva〕(シヴァ)《吉祥》【サンスクリット】
容姿黒い肌。
特徴破壊神。暴風雨の神。
出典『リグ・ヴェーダ』『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』ほか

この世の終わりに破壊の舞を踊る!?

シヴァ神はヒンドゥー教の創造神ブラフマー(ब्रह्मा、維持神ヴィシュヌ(विष्णु)と並ぶ最高神の一人で、世界を破壊する破壊神の役目を負う。ブラフマー神がこの世界を創造し、ヴィシュヌ神が維持し、そしていつかこの世が終焉するときには、シヴァ神が激しく破壊の踊りを踊り、この世を滅ぼしてしまうのである。

もともと、シヴァ神はヴェーダ神話に登場する暴風雨の神ルドラ(रुढ्र)を前身としており、『リグ・ヴェーダ』では「シヴァ」はルドラの尊称として登場しているだけだった。ルドラはモンスーンを神格化した神で、激しい嵐による破壊と豊饒の二面性を持った神として描かれている。シヴァ神もルドラ神の二面性を受け継いでおり、激昂しやすく残酷な神でありながら、ときに優しく慈悲深い神でもある。妻のパールヴァティー(पार्वती)との間に知恵の神ガネーシャ(गणेश、軍神スカンダ(स्कन्द)を儲けている。

シヴァ神が人間の姿で描かれるときには青黒い肌の男性神として描かれ、苦行者のように上半身裸で、腰に虎の皮を纏った恰好をしている。長い髪は頭の上でぐるぐるとまとめられており、新月が飾られている。額には白い三本の線が引かれ、その真ん中には縦に第三の眼がついている。この第三の眼からは炎の光線が出て、全てを焼き尽くすのだという。手には三叉の鉾トリシューラ(त्रिशूल)とデンデン太鼓のようなダマル(डमरु)と呼ばれる法具を持つ。首にはコブラを巻きつけている。頭上からは水が噴水のように噴き出していることがあるが、これはガンジス河の始まりだという。しばしば鎌首を持ち上げたコブラが髪の毛に巻きついていることもある。シヴァ神のヴァーハナ(वाहन)(騎乗獣)は乳白色の聖牛ナンディン(नन्दिन्)である。霊峰カイラーサ(कैलास)に居城を構えている。

シヴァ神、猛毒を飲み干して世界を救う!?

青黒い色の肌をしているのには理由があって、大昔、まだ神々が世界の覇権を確立していなかった時代、年老いて力が衰えていった神々が、天界にある大海を掻き混ぜて不死の霊薬アムリタ(अमृत)を手に入れようとした。海を攪拌するため、マンダラ山(मंदार)を引き抜いてきて攪拌棒とし、そこに竜王ヴァースキ(वासुकि)を巻きつけて両岸から引っ張った。ヴァースキはあまりの苦しさから口から猛毒ハラーハラ(हलाहल)を吐き出して危うく世界を滅ぼしそうになった。そこでシヴァがその毒を飲み干して世界を救ったのだが、ヴァースキの猛毒で喉が焼け焦げ、それ以来、シヴァは真っ黒く変色したのだという。

シヴァ神の第三の眼の秘密!?

あるとき、瞑想ばかりしているシヴァに飽き飽きしたパールヴァティーが、ちょっとした悪戯心でシヴァ神の両目を後ろから塞いだ。すると世界は一瞬で闇に覆われ、地上の生き物たちは怖れ慄いた。そこで彼らを救うために、シヴァは額に第三の眼が開いた。こうしてシヴァ神には第三の眼ができたのである。

シヴァ神のシンボル・シヴァリンガ!?

シヴァ神はシンボルとして、リンガ(लिङ्ग)と呼ばれる男性器の姿で描かれることもある。先の丸い柱で、シヴァを祀る寺院には、しばしばリンガ(男性器)とヨーニ(女性器)を模った石が安置され、礼拝の対象となっている。