山女(ヤマオンナ)

[日本伝承]

名称山女(ヤマオンナ),山姫(ヤマヒメ),山女郎(ヤマジョロウ)【日本語】
容姿長い黒髪。色白で美しい女性。
特徴山に棲む。人間の血を吸う。ナメクジを嫌う。

恐ろしき山の吸血美女!?

山女(ヤマオンナ)は山に棲む女性の妖怪で、山姫(ヤマヒメ)とか山女郎(ヤマジョロウ)などと呼ばれることもある。山姥(ヤマンバ)と同じように人を襲う恐ろしい存在として想像されているが、山姥が醜い老婆の姿で描かれるのに対して、山女の場合は地面につくほどの長い黒髪で若く色白の美しい女性として描かれる。

日本全国に伝わっているため、地域によっていろいろなヴァリエーションがある。腰に蓑をつけただけの半裸のものもいれば、十二単を着ているものもいる。しかし、いずれの山女も、山中で遭遇した人間の血を吸う恐ろしい妖怪で、山女に出会った人間は死んでしまうとされている。

熊本県の山女は、山の中で出会った人間を見てゲラゲラと嗤うという。遭遇した女性は、大声を出して何とか山女を追い払うことに成功したが、嗤われているときに血を吸われていたようで、下山してしばらくして死んでしまったという。大分県の山女は絶世の美女だったというが、遭遇した男性が眺めていると、舌がするすると伸びて地面でとぐろを巻き、血を吸われ、全身蒼白になって死んでしまったという。青森県の山女は美しい白肌だったが、身長2メートルほどの巨体だったという。高知県の山女なんかは恐ろしく、出会っただけで熱病を発症して人間を死に至らしめるという。

山女には弱点がないわけではないようで、宮崎県の伝承ではナメクジが苦手とされている。ナメクジを握り締めていると襲われないのだという。

山女はしばしば旅人に白粉(おしろい)をねだったり、山麓まで降りてきて酒を買ったりするなどとされている。また、江戸時代の怪談『宿直草(とのいぐさ)』(1677年)では、岡山の山姫に気に入られると宝がもらえるなどという記述があるが、山姥がしばしば人間に福をもたらすのに対して、山女は福をもたらすことはほとんどなく、恐ろしい存在として描かれる。

《参考文献》