バロン
[バリ島伝承]
【言語】【言語】Barong(バロン)【インドネシア語】
【容姿】獅子の姿。真っ赤な顔。ぎょろりとした目玉。2本の牙。
【特徴】バリ島の「善」の象徴。魔物と戦う。
バリ島の「善」なる怪物!?
インドネシアのバリ島に伝わる獅子の姿をした聖獣。まるで日本の獅子舞のような雰囲気で、真っ赤な顔にぎょろりとした目玉。2本の長い牙をはやし、白く長い毛に覆われた獅子の姿をしている。全身に小さな鏡がたくさん貼りつけてあり、金の装飾をかぶっている。
バリ島はバリ島特有のヒンドゥー教が発達しており、バロンはバリ島ヒンドゥー教の中で「善」を象徴する存在として、右手の魔術を用いてあらゆる災害を防ぐと信じられ、村の寺院の一隅に収められ、日々、供え物と祈りを捧げられていた。「悪」の象徴であり、左手の魔術の使い手である魔女のランダと対になって描写され、ランダと永劫の戦いを続けるという。ランダが夜と闇を象徴し、病気や死をもたらす存在なのに対し、バロンは太陽と光を象徴し、病気を癒す。しかし、バロンとランダの対立は単純な善悪二元論的な世界ではない。もともとバロンも怪物であり、ランダの側に与する。しかし村人たちが供え物をすることで「善」の側に引き寄せ、ランダと戦わせているのである。魔女ランダは吸血鬼レヤックを率い、バロンは餓鬼ブータや小鬼カーラらを従えて戦っている。
祭日になると、チャロンアラン劇(Calonarong)の中で、バロンダンスという悪霊祓いの舞が踊られる。近年では観光客相手の見世物になってしまっていることも多いが、もともとはオダラン(Odalan)と呼ばれる寺院の創立祭のときに、二人の男性がバロンの張りぼてに入って村中を練り歩き、寺院の境内でガムランの伴奏に合わせて踊り狂う。バリ島では210日を1年とするウク暦という暦があるため、それぞれの寺院のオダランは210日に1回やってくることになる。寺院のお堂にはバロンとランダの仮面と衣装がセットで保管されており、魔力で動き出さないように特別な布で蔽って封印されている。祭りの日には供え物が捧げられ、それから選ばれた演者が仮面をつけて踊るのである。