コカトリス

[ヨーロッパ伝承][フランス伝承]

【言語】Cockatrice(コカトリス)【英語】
    Cocadrille(コカドリーユ)【フランス語】

雄鶏の産んだ卵をヒキガエルが温めて生まれる怪物!!?

コカトリスは雄鶏の身体にヘビの尻尾、コウモリ(あるいはドラゴン)の翼を持った怪物。怪物バシリスクと同一視され、猛毒の息や視線で動植物を絶命させる。雄鶏の産んだ卵をヒキカエルやヘビが温めて孵化させるとコカトリスが生まれてくるという。バシリスクは雄鶏の鳴き声が弱点とされたが、コカトリスの場合、この弱点は克服されているようだ。堆肥の上に産み落とされた雄鶏の卵から生まれるとも言われる。

コカトリスは、エジプト・マングースがヘビの天敵であるという伝説が時代とともに混乱して伝わって登場した怪物のようだ。古代エジプトでは、マングースはヘビを殺す生き物と信じられていた。これがラテン語でCalcatrixに翻訳され、古フランス語でCocatrisになり、最終的には現在のようなコカトリスという怪物になっていったと推測されている。ヘビの天敵で、ヘビを殺すとされたマングースが、いつの間にかバシリスクと混同される恰好で、逆にヘビの怪物になってしまったらしい。ヘビの怪物にニワトリの姿が混ざったのは、cock(コック)《雄鶏》という響きからの連想だと考えられる。

フランスの作家ジョルジュ・サンド(George Sand)は、中部フランスの伝承をいろいろと収集しているが、彼女は『田舎の夜の幻』の中で、コカドリーユの伝承を紹介している。これは疫病を流行らせる恐ろしい怪物ということになっている。姿は小さなトカゲだが、一目につかないところを歩き回り、一晩で信じられないほどの大きさになる。そして口から毒を吐き出して、疫病を流行らせるというのである。この怪物は鉄砲も大砲も効かないとされ、退治する方法は、棲んでいる沼地を干上がらせてしまうか、兵糧攻めにするしかないのだという。

近年のゲームなどでは、バシリスクとコカトリスの能力を差別化するため、バシリスクを爬虫類の怪物、コカトリスを鳥の怪物とすることが多い。また、どちらも石化能力を持つ点では一緒だが、バシリスクは視線そのものに石化能力があるとされ、接触しなくても石化する一方で、コカトリスは接触によって石化する。コカトリスの石化能力はランク・ダウンしているが、逆にコカトリスは飛翔能力を備えることになる。これはゲーム独特の解釈である。