ドリュアス

[ギリシア・ローマ神話]

名称 Δρύας(ドリュアス)【古代ギリシア語】 pl. Δρυάδες(ドリュアデス)
Dryad(ドライアド)【英語】
Dryad(ドリアード)【フランス語】
容姿美しい女性の姿をした精霊(ニュムペー)
特徴樹木の精霊。樹木が枯れると死ぬ。しばしば樹木の中に男子を引き込む。

樹木とともに生きる古代ギリシアの精霊!?

ギリシア・ローマ神話に登場する精霊たちはニュムペー(Νύμφηと呼ばれるが、ドリュアスはギリシア・ローマ神話に登場する樹木に宿るニュムペーだ。英語ではDryad(ドライアド)、フランス語ではDryad(ドリアード)と呼ばれていて、日本のファンタジー小説やゲームなんかでは、こっちの名称の方が馴染みがあるという人も多いかもしれない。ギリシア語で《オーク》を意味するδρῦς(ドリュス)に由来するため、特にオークの樹の精霊とされる。古代ヨーロッパでは、オークの樹というのは神聖なものとして崇拝されていた。ドリュアスたちも、機嫌を損ねないように、蜂蜜やミルクなどが捧げられていたという。ドリュアスは森の中に暮らし、滅多に人前に姿を現さないが、緑色っぽい髪をオークの葉で作った髪飾りで飾った美しい女性の姿をしているとされている。一般にニュムペーたちは長寿として知られるが、彼女たちの場合、樹木と一生を共にするため、樹齢と同じだけ生きる。樹木と共に生まれ、樹木が枯れると死んでしまうのである。そのため、樹木を不用意に傷つけるような人間はしばしば神々によって懲らしめられる。デーメーテール女神が大切に育てていたオークの樹があったが、エリュシクトーン(Ἐρυσίχθων)という男は、その樹に宿っていたドリュアスの制止も聞かず、この樹を伐り落とした。そのため、デーメーテール(Δημήτηρ)によって何を食べても満腹にならない呪いをかけられ、最終的には自分自身を食べて死んでしまった。

ドリュアスたちは、しばしば若い男性を誘惑し、木の中に引きずり込んで閉じ込めてしまうことがある。こうして囚われた男性は、浦島現象を味わうことになる。たった1日しかドリュアスと過ごしていないと思っていたのに、元の世界に戻ったら数十年、あるいは数百年が経っていたというケースがある。

ドリュアスはアルテミス女神( Ἄρτεμις)の従者として描かれることもある。また、有名なドリュアスの一人に、竪琴の名手オルペウス(Ὀρφεύς)の妻となったエウリュディケー(Ευρυδίκη)がいる。

《参考文献》