ドヴォロヴォーイ
[スラヴ伝承]
【言語】Дворово́й(ドヴォロヴォーイ,ドヴァラヴォーィ)【ロシア語】
【容姿】毛むくじゃらの姿。
【特徴】中庭に棲み憑き、動物に悪戯をしたり、稀に庭で暴れたりする。
ロシアの村の中庭に棲み憑く悪戯者!?
スラヴ伝承に登場する家憑き妖精。特に家の中庭に棲み憑く。その名前はロシア語で《中庭》を意味するдво́р(ドヴォール)に由来している。同じようなスラヴの家憑き妖精のДомово́й(ドモヴォーイ)が野生化したような性質の妖精で、全身毛むくじゃらで、取り立てて人間に対して好意的なわけでも、敵意を向けているわけでもない。しかし、白い毛を持つ動物が嫌いなので、そのような動物をいじめたりする。特に仔牛や仔馬がよく被害に遭うため、ドヴォロヴォーイに悪戯されないように、ある程度、成長するまでは小屋の中に入れておかなければならないとされた。しかし雌鶏だけは特別で、ドヴォロヴォーイにいじめられることはないという(ロシアではしばしば「鶏」は特別な存在とされるのである)。機嫌が悪いときには庭で大暴れすることもある。大抵はパンを与えれば宥(なだ)めることができるが、あまりにも言うことをきかないときには白い獣の毛を投げつければいいという。また、干し草を運ぶ熊手などで突き刺して懲らしめるという。
ある伝承によると、ドヴォロヴォーイはハンサムな男性に変身して出現し、農地で困っていた若い女性を助けてやったことがあるという。彼はこの娘に対して恋愛感情を抱いたが、彼女が他の人間の男性と結婚しようとしたときには、嫉妬から彼女の髪の毛をぐしゃぐしゃにもつれさせてしまったという。