ホムンクルス

[ヨーロッパ伝承]

名称Homunculus(ホムンクルス)《小さい人》【ラテン語】
容姿フラスコの中の小人。
特徴人工生命体。生まれながらに博識。フラスコの中で造られ、一説ではフラスコから外には出られない。
出典パラケルスス『ものの本性について』、ゲーテ『ファウスト』ほか

人間の創造:錬金術師、神の領分に手を染める!?

ホムンクルスは、錬金術師によって人工的に作り出される人造人間のこと。ホムンクルスの精製に成功したとされるのは、16世紀のスイスの錬金術師パラケルスス(Paracelsus)。パラケルススの著作『ものの本性について(De Natura Rerum)』にはホムンクルスの精製方法が書いてある。それによれば、人間の精液を馬糞や薬草(ハーブ)などとともに蒸留器(フラスコ)に入れて、40日間密封して腐敗させるのだという。そうすると、やがて人間の形をした透明な生命が誕生する。これに人間の生き血を与え続け、40週間、馬の胎内と同じ温度に保ち続ける。やがてちゃんとした人間の子供になるという。ただし、人間の子供よりもずっと小さい姿なのだとされ、そのため、ラテン語で《小さい人》という意味で、ホムンクルスと呼ばれているのである。ちゃんと育て続ければ、人間と同様に自立し、知性も備える。けれど、一説によると、ホムンクルスはガラス容器の中でしか生きられないとされる。また、このような技術の結晶として精製されたホムンクルスは、生まれながらにしてあらゆる知識に身につけているとも言われ、様々なことを教えてくれるとも信じられている。

賢きホムンクルス、完成を目指して旅に出る!?

ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)の『ファウスト(Faust)』にも、ホムンクルスの精製を扱った 有名なシーンがある。かつてファウスト博士の弟子だったヴァーグナーが、後に大学者になってホムンクルスの精製に成功する。けれども、このヴァーグナーの実験が中途半端な形で完成してしまったため、ホムンクルスは肉体を持つことができなかった。そこで、完成を目指してファウストの旅に同行し、やがてフラスコから抜け出すことに成功する。

自然の物にとっては宇宙といえども広すぎるということはありませんが、
人工の物には、限られた空間が必要なのです。

(ゲーテ『ファウスト』第二部第二幕6883行目から6884行目より)

ホムンクルスはフラスコの中で生きてることに対して、このように説明している。なかなか哲学的で面白い。

《参考文献》