キジムナー・ビー
[沖縄伝承]
【言語】キジムナー・ビー〔Kizimunaabii〕《キジムナーの火》【沖縄方言】
【容姿】怪火。
【特徴】海上を高速で移動。人家で原因不明の火傷を負わせる。死の予兆。
キジムナーが起こす怪火
怪火の伝承は世界各地に残されている。ウィル・オ・ザ・ウィスプやイグニス・ファトゥウス(Ignis Fatuus)などが有名だが、日本にも鬼火、人魂、釣瓶火など、さまざまな怪火が知られている。海に出現する怪火というのも例がたくさんあって、有名なものではセントエルモの火や不知火などがある。セントエルモの火は船のマストの先端が突然、発光するというもので、古代ギリシアから記述が残されている。一方、不知火は沖の海面に無数の炎が灯る現象である。
沖縄にも同様の怪火はあって、キジムナー・ビーと呼ばれる。海上や渓谷をゆらゆらと怪しく動き回る。水の中でも、その火は消えることはないという。ガジュマルの精霊キジムナーが夜中の間に持ち歩いている火とされ、ものすごい速度で海上を走り回るという。また、通常、このような怪火は「陰火(いんか)」と呼ばれ、触っても熱くない火であることが多いが、キジムナー・ビーの場合、夜中に人の家に入り込んで、人間を火傷させることもあるという。これはキジムナー・ヤーチュー《キジムナーのお灸》と呼ばれ、原因不明の水膨れなどができたときには、キジムナーの仕業とされた。また、家の屋根にキビムナー・ビーが出現すると、死の予兆とされ、その家の誰かが死ぬとされた。