クラーケン
[ヨーロッパ伝承][中世博物誌]
【言語】Kraken(クラーケン)【英語】
【出典】ポントピタン『ノルウェー博物誌』ほか
巨大な海の怪物、船を襲う!?
長い航海の途上、海上に浮き島を発見する。喜び勇んだ船乗りたちが上陸すると、突然、島だと思っていたものは海中に潜り込む。それは島ではなく巨大な怪物だったのである。怪物は長い腕を伸ばして船を襲い、乗組員たちを次々と喰らう。これがクラーケンだ。巨大な海洋生物の総称で、主にノルウェーやアイスランドなど、北の海で目撃されることが多い。稀に南アフリカのアンゴラ沖で目撃された例もあるため、もしかしたら世界全土に棲息しているのかもしれない。
クラーケンは巨大な多足類!?
クラーケンの姿や正体については他説ある。もっとも一般的な説は多足類である。多足類というのは巨大なタコやイカなどのこと。クラーケンが複数の腕を持つとか、墨を吐きだすなどの特徴から、多足類であるとされる。実際、クラーケンの最も有名な目撃談として知られる18世紀のデンマークの司教ポントピタン(Erik Pontoppidan)も、『ノルウェー博物誌』の中でクラーケンが吐いた墨で海が真っ黒になったと記している。けれども、海上から一部しか観察されないためか、さまざまな動物がクラーケンの正体として語られる。巨大なウミヘビやクジラ、エビやカニなどの甲殻類、その他イソギンチャクやクラゲ、ヒトデに至るまで、本当にさまざまな種類の動物が挙げられている。フランスの軟体動物学者のモンフォール(Pierre Dénys de Montfort)はクラーケンをタコであると考えたようで、巨大タコが船を襲っている絵を実にたくさん残している。ダイオウイカが発見されたときには、これこそがクラーケンの正体ではないかと騒がれた。
クラーケンは信心深い!?
クラーケンは必ずしも恐ろしいだけの怪物ではないようで、15世紀には、アイルランドの聖ブレンダン(Saint Brendan)が島と間違えて上陸。聖ブレンダンが祝福のミサをあげている間、ずっと動かずにいたと伝えられている。この信心深いクラーケンの体長は2.5kmに及んだというから巨大である。また、人喰いとして船乗りたちに恐れられているクラーケンだが、特殊な香りを放って、その香りに引き寄せられた魚を食べるという特徴も報告されている。漁師たちは巧みにクラーケンに近づき、この香りに引き寄せられた魚を収穫して、大漁に恵まれたとも言われている。