リリス

［ユダヤ教］［キリスト教］

名称	לִּילִית〔Līlīt〕（リーリート）【ヘブライ語】 Līlītu（リーリートゥ）〔アッカド語〕 Lilith（リリス）【英語】
特徴	アダムの最初の妻。子供をさらう悪魔。
出典	『ベン・シラのアルファベット』（８～11世紀）

騎上位を求めた夜の魔女！？

リリスはユダヤ教やキリスト教に登場する夜の妖怪。幼児や妊婦を襲う怪物として想像された。もともとの起源はメソポタミアのリル、あるいはリーリートゥという風の妖怪に遡れる。リーリートゥは荒野などで赤ん坊と妊婦を襲う嵐の妖怪だった。これがユダヤ伝承及びキリスト教にも取り入れられ、子供をさらう妖怪として怖れられた。

中世になると、リリスはアダムの最初の妻とされた。エヴァに林檎を勧めたのもリリスだったという説もある。悪魔たちとの間にたくさんの子供を産んでいる。

リリスがアダムの最初の妻であるとしている資料は８世紀から11世紀に成立した『ベン・シラのアルファベット』である。それによれば、リリスは騎乗位を好んだが、アダムに正常位を強要されたため、アダムを拒んで、エデンの園から出奔したという。その後、紅海沿岸で、悪魔たちの妻となり、シェディム（Shedim，שדים）やリリン（Lilin，לִילִין）といった子供たちをたくさん産んだ。アダムがリリスの帰還を願ったので、神は三人の天使を差し向けて、リリスにアダムの元に戻るように説得させた。しかし天使たちに「アダムのもとに戻らなければ毎日リリスの産んだ子供を100人ずつ殺す」と脅迫されても、リリスは「アダムとエヴァの子供を喰らってやる」と言ってエデンの園に戻ることを固辞したという。そのため、ユダヤ教徒は、割礼の際には、三人の天使の名前が書かれた護符を赤ん坊の首に巻きつけた。この護符が、リリスとその子供たちから護ってくれると信じられていたのである。

リリスがアダムの最初の妻であるという思想は中世ヨーロッパで誕生したが、その背景には『旧約聖書』「創世記」の１章27節の「神は御自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女にかたどって創造された」という表現がある。この記述は、アダムの肋骨からエヴァが作られる以前の記述であったため、エヴァの前に女性がいたと解釈されたのである。ここからリリスがアダムの最初の妻という伝承が生まれたと考えられている。