マンドラゴラ
[ヨーロッパ伝承]
Μανδραγόρας(マンドラゴラース)【古代ギリシア語】 Mandragora(マンドラゴラ)【英語】 Mandrake(マンドレイク)【英語】 | |
容姿 | 根っこが人間の形をした植物 |
特徴 | 地面から引き抜くと絶叫し、その声を聞いた人間は発狂する。 |
出典 | 『ロミオとジュリエット』ほか |
その絶叫を聞いた者は発狂する!?
マンドラゴラは、根っこが人間の形をしているという伝説の植物。日本語で恋茄子(こいなすび)と訳されることもあるように、丸い実には強精、催淫などの媚薬としての効果があると信じられた。マンドラゴラは熟すると根っこが二つに分かれ、そのまま地上に出て歩き出すなどとも信じられた。白いマンドラゴラがオス、黒いマンドラゴラがメスという説もあり、女性の心を惹こうとする場合には白いオスのマンドラゴラを、男性の心を惹こうとする場合には黒いメスのマンドラゴラを用いればいいとされる。
マンドラゴラは引き抜くときにものすごい悲鳴をあげる。この悲鳴を聞いたものは発狂するとか、絶命などとされた。そのため、犬の尾にマンドラゴラの葉をくくりつけて、自分は耳に蝋を詰めて遠くから犬を呼ぶ方法で採取されるという。こうすれば、犬は死んでしまうが、マンドラゴラを手に入れることができた。しばしばマンドラゴラは犬の死体と一緒に取り引されたという。
もともと、マンドラゴラはナス科マンドラゴラ属の植物として実在しているもので、ニンジンに似た根っこには幻覚、幻聴を伴う神経毒が含まれていて、麻薬として、あるいは睡眠薬として、古くから薬草として用いられてきたという。古代エジプトの王妃クレオパトラーも愛飲していたとされる。稀に根っこが人間に似た形になることもあるという。
その劇的な毒の効力と、根っこの特徴的な形から、さまざまな伝説が付加されるようになり、中世の頃には、錬金術や魔術と強く結びつけられるようになった。シェイクスピアも『ロミオとジュリエット』や『オテロー』などでマンドラゴラに言及しているが、古くは『旧約聖書』にもその伝説を見ることができる。また、古代ローマのプリーニウスも『博物誌』の中でマンドラゴラースを紹介している。
ドイツ伝承に登場するアルラウネ(Alraune)もマンドラゴラの一種である。
《参考文献》
- 『シリーズ・ファンタジー百科 世界の妖精・妖怪事典』(著:キャロル・ローズ,監訳:松村一男,原書房,2003年〔1996年〕)
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』 (著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『図説 幻獣辞典』 (著:幻獣ドットコム,イラスト:Tomoe,幻冬舎コミックス,2008年)