モレク
[キリスト教]
מֹלֶךְ(モレク)《王》【ヘブライ語】 Molech(モレク),Moloch(モロク)【英語】 | |
容姿 | 雄牛の頭を持った悪魔。 |
特徴 | 人身御供を求める悪魔。 |
出典 | 『レビ記』『エレミア書』ほか |
人身御供を要求する恐ろしきアンモン人の神!?
モレクは中世ヨーロッパのさまざまな文献に現れる悪魔。旧約聖書では、死海の北東に住むアンモン人たちが崇める邪神として描かれている。アンモン人は人身御供としてモレクに子供を生け贄として捧げる風習があったとされており、この風習から中世ヨーロッパではモレクは恐ろしい悪魔と見做されるようになった。アンモン人は空洞になっている青銅製のモレクの像の内部に火を燃やし、その中に子供たちを投げ込んだという。このときにはシンバルや太鼓を鳴らして子供たちの声が聞こえないようにしていたという。その姿は牡ウシの頭に人間の身体を持ったものとして想像されている。
自分の子を一人たりとも火の中を通らせてモレク神にささげ、あなたの神の名を汚してはならない。わたしは主である。
(『旧約聖書』「レビ記」18章21節より)
イスラエルの人々にこう言いなさい。イスラエルの人々であれ、イスラエルに寄留する者であれ、そのうちのだれであっても、自分の子をモレク神にささげる者は、必ず死刑に処せられる。国の民は彼を石で打ち殺す。/わたしは、その者にわたしの顔を向け、民の中から断つ。自分の子をモレク神にささげ、わたしの聖所を汚し、わたしの聖なる名を冒涜したからである。/もし、国の民が、自分の子をモレク神にささげる者を黙認し、殺さないならば/わたしがその者と家族に顔を向け、彼および彼に倣ってモレク神を求めて淫行を行うすべての者を民の中から断つ。
(『旧約聖書』「レビ記」20章2節から5節より)
そのころ、ソロモンは、モアブ人の憎むべき神ケモシュのために、エルサレムの東の山に聖なる高台を築いた。アンモン人の憎むべき神モレクのためにもそうした。
(『旧約聖書』「列王記 上」11章7節より)
王はベン・ヒノムの谷にあるトフェトを汚し、だれもモレクのために自分の息子、娘に火の中を通らせることのないようにした。
(『旧約聖書』「列王記 下」23章10節より)
ベン・ヒノムの谷に、バアルの聖なる高台を建て、息子、娘たちをモレクにささげた。しかし、わたしはこのようなことを命じたことはないし、ユダの人々が、この忌むべき行いによって、罪に陥るなどとは思ってもみなかった。
(『旧約聖書』「エレミヤ書」32章35節より)
お前たちは拝むために造った偶像、/モレクの御輿やお前たちの神ライファンの星を/担ぎ回ったのだ。だから、わたしはお前たちを/バビロンのかなたへ移住させる。
(『新約聖書』「使徒行伝」7章43節より)
聖書では、何度もモレクに子供を捧げることをたしなめ、禁じていることが分かる。それでも多くの人々がモレクを崇拝したということなのだろう。『列王記』の中では、ソロモン王もモレクのために祭壇を築いたと記述されている。ミルトンは『失楽園』の中にモロク(Moloch)という名前でモレクを登場させ、作中、もっとも獰猛な堕天使として描いている。