オヴィーンニク
[スラヴ伝承]
【言語】Ови́нник(オヴィーンイク,アヴィーンニク)【ロシア語】
【容姿】毛むくじゃらの真っ黒い猫。目からは炎が出る。
【特徴】穀物倉に棲み、機嫌を損ねると穀物倉を燃やす。雄鶏を供えて宥(なだ)めた。
穀物倉の「火事」を象徴する猫の怪物!?
スラヴ伝承に登場する納屋や穀物倉の精霊。その名前はロシア語で《納屋》を意味するови́н(オヴィーン,アヴィーン)に由来する。毛むくじゃらの黒猫の姿をして、イヌのように吠えたり、人間のように笑ったりするという。機嫌が悪いときには真っ赤な目から炎を出し、すぐに周辺にあるものを燃やしてしまう。そのため、雄鶏を生け贄に捧げ、オヴィーンニクを宥めたという。
ロシアの納屋は作物を貯蔵するだけでなく、脱穀や乾燥を行う部屋もあり、さらには簡単な炉もあった。そのため、風の強い日には火の粉が舞い、納屋が火事になることが多かったのだろう。風の強い日に炉に火を入れないように戒められ、母屋と納屋とは離して建設されることが多かった。オヴィーンニクはそのようなロシア人の納屋に対するイメージから生まれた精霊なのだろう。この精霊に雄鶏を供え、宥めることで、穀物倉を火災から守ろうとしたのだろう。
ちなみに、20世紀初めのロシアの画家ビリービン(Ива́н Яковле́вич Били́бин)は、毛むくじゃらの、腹が膨れた痩せた禿げ頭の老人の姿で描いている。