スライム

[SF小説][ホラー映画]

【言語】Slime(スライム)《どろどろしたもの,ヘドロ,粘性》【英語】
【出典】J.P.ブレナン『スライム』ほか

SF世界に登場したグロテスクな人喰いモンスター!?

スライムというのは、アメーバに似た、どろどろした不定形の生命体のこと。日本では、鳥山明がデザインした「ドラゴンクエスト」シリーズのスライムがよく知られているため、かわいらしいキャラクタとして造形されることも多いが、もともとはSF作品、ホラー作品などに登場する恐ろしい人喰いモンスターである。

ブレナンが描いた『スライム』

スライム(slime)という言葉自体は、アメリカ作家ジョセフ・ペイン・ブレナン(Joseph Payne Brennan)のSF小説『スライム(Slime)』によって初めて使われた。ブレナンの『スライム』では、スライムは地球に海ができた頃から深海に棲息している太古の生物ということになっている。どろどろした粘着質な身体で生き物を包み込むようにして喰らい、次第に巨大化していく。その見た目とは異なり、かなり素早く移動することができる。また、不定形であるため、打撃や斬撃の類いが効かない。銃も効かないとされている。弱点は炎で、燃やしてしまえば死んでしまう。

ショゴス、スライム、ブロブ……

古くはラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)の『狂気の山脈にて(At the Mountains of Madness)』に登場するショゴスが、すでにこのような不定形の怪物として描かれている。また、SF映画『人食いアメーバの恐怖(The Blob)』で、宇宙から飛来したアメーバ状の生命体ブロブが登場し、その恐ろしい姿が初めて映像化された。

アメーバや粘菌などの生物が発見される以前の神話・伝承、あるいは物語には、このようなグロテスクな不定形生命体は登場しない。アメーバなどの生物のイメージから連想された、新しい怪物であるといわれている。

近年のスライム事情~スライムは弱く、かわいらしい?

スライムのような不定形生命体は、『D&D』などを中心に、さまざまなロール・プレイング・ゲームにも登場するようになっていくが、酸化能力があるとか、毒を持つなど、特殊能力を備えたさまざまなスライム類が登場しているが、武器による直接攻撃に強く、火に弱いというブレナンが描いた特徴は、長く踏襲されていく。『ウィザードリィ』や『ハイドランド』、あるいは『ドルアーガの塔』などで弱いモンスターとして設定されたため、日本ではスライムは弱いモンスターであるという認識が広く定着している。鳥山明のスライムのイラストもそのイメージに拍車をかけ、グロテスクなイメージは薄れている。