ヴリトラ

[インド神話]

名称वृत〔Vr̥tra〕(ヴリトラ)《障害》【サンスクリット】
अहि〔Ahi〕(アヒ)《蛇》【サンスクリット】
容姿手足のない巨大な大蛇。
特徴天の川を塞き止め、地上に旱魃を引き起こす。雷神インドラによって退治される。乾季と旱魃の象徴。
出典『リグ・ヴェーダ』,『マハーバーラタ』ほか

インドラの最大の敵、悪竜ヴリトラ!!

ヴリトラは『リグ・ヴェーダ』などに登場する悪竜。手も足もない巨大な大蛇で、不死身の存在だが、唯一、口の中に弱点があった。ヴリトラは天から注ぐ川をその身体で塞き止め、旱魃(かんばつ)を起こし、太陽を覆い隠して飢餓(きが)を引き起こし、地上の人間たちを苦しめていた。そこで雷神インドラ(इन्द्र)がヴリトラ退治に赴くが、一度はヴリトラに飲み込まれてしまう。しかしインドラはヴリトラが欠伸(あくび)をした瞬間に口から脱出。ヴィシュヌ(विष्णु)が仲介して、和平条約が結ばれ、ヴリトラは「石や木材や金属、乾いたものでも、濡れたものでもインドラから攻撃されない」、そして「昼も夜もインドラから攻撃されない」という確約をとりつけた。インド神話では、この確約は絶対のものである。しかしインドラは、石でも木材でも金属でもなく、乾いたものでも、濡れたものでもない聖者の骨からヴァジュラ(वज्र,金剛杵)を造り、昼でも夜でもない夕暮れ時にヴリトラを退治した。

しかし、一説によれば、ヴリトラは毎年、復活し、インドラと戦うのだという。これは雨季と乾季の入れ替わりを説明をした神話で、乾季、旱魃の象徴であるヴリトラを雷神であるインドラが打ち倒し、雨季が訪れるということを説明しているのだという。

叙事詩『マハーバーラタ』にもヴリトラは登場する。この中では人間の姿をした神となっているが、この叙事詩の中でも、ヴリトラはインドラによって倒される。

《参考文献》