ケルベロス
[ギリシア・ローマ神話]
【言語】Κέρβερος(ケルベロス)【古代ギリシア語】
地獄を守る番犬と言えばこの怪物!?
古来より、死者の国とイヌは結びつきが強い。北欧神話の冥府Hel(ヘル)には真っ黒い猟犬Garmr(ガルム)がいて、死者たちを見張っている。インド神話では、地獄の王यम〔Yama〕(ヤマ:日本では閻魔さまとして知られる)が四つの目を持つ猟犬शबल〔Śabala〕(シャバラ)とश्याम〔Śyāma〕(シュヤーマ)を飼っていて、この二頭の猟犬が死者たちを地獄に連れ去ると信じられていた。古代エジプトでは古くはヤマイヌの姿をした神Inpw(インプゥ/アヌービス)が冥府の王だった。Usir(ウシル/オシリス)が冥府の王になってからも、ミイラ作りを発明した神、魂の計量を行なう神として崇拝された。古代ギリシアでも、番犬が地獄ᾍδης(ハーデース)を見張っているとされた。その恐ろしい番犬がΚέρβερος(ケルベロス)だ。
ケルベロスは三つの頭を持った猟犬で、背中からはあらゆる種類のヘビのたてがみがはえている。お尻からはドラコーン(ヘビの怪物)の尾がはえている。頭の数は三つではなく、五百個とされることもある。ケルベロスは怪物テューポーンとエキドナの息子で、冥府の入り口に流れる川の対岸に棲み、ハーデースの許可なく勝手に冥府へ侵入したり、冥府から脱出したりしようとする人間がいると襲い掛かる。生肉を喰らい、青銅の声で吠えるという。
恐ろしいケルベロスだが、彼は何度か、番犬として失態を演じている。竪琴の音色に心を打たれ、オルペウスの冥府への侵入を許した。アイネイアースは菓子パンに睡眠薬を混ぜてケルベロスを眠らせ、冥府へ侵入することに成功している。また、英雄ヘーラクレースには素手で首を絞められて生け捕りにされ、地上へと引きずり出された。このとき、あまりの苦しさからケルベロスが垂らしたヨダレから毒草トリカブトが誕生したという。