ルキフゲ・ロフォカレ
[魔法書文献]
Lucifuge Rofocale(ルキフゲ・ロフォカレ) Lucifugé Rofocale(リュシフュージェ・ロフォカル)【フランス語】 | |
容姿 | 3本のねじれた角を持った悪魔。下半身はヤギ。ピエロのような服を着る。 |
特徴 | 地獄の宰相で、召喚になかなか応じない。しかしうまくすれば毎日、富を与えてくれる。 |
出典 | 『レ・グラン・グリモワール』ほか |
地獄の宰相ルキフゲ・ロフォカレ!?
ルキフゲ・ロフォカレは魔法書『レ・グラン・グリモワール(Le Grand Grimoire)』に登場する悪魔。地獄の宰相で、ルシファーから世界の富と財宝の管理を任されているという。そのため、富と財宝を目当てに魔術師たちが召喚したがる悪魔だ。
魔法書『レ・グラン・グリモワール』というのは日本では「大いなる教書」とか「大奥義書」などと訳される。意味は《大魔法書》。魔法書『レメゲトン』と同じで、あのソロモン王が書いたと騙られている魔法書。もちろん、古く見積もっても15~16世紀頃に書かれた代物と推定されている。一説では1522年にフランスでまとめられたことになっているが、その内容から19世紀に書かれたものだとする学者もいる。なかなか契約に応じないという悪魔ルキフゲ・ロフォカレを召喚する方法が書かれていることもあって、一部のオカルティストたちからは絶賛を浴びている。ウエイト(Arthur Edward Waite)も「(数ある魔法書の中で)もっとも驚嘆すべきもののひとつ」と評価している。
『レ・グラン・グリモワール』は悪魔ルキフゲ・ロフォカレを召喚して使役するための方法が書いてある書物で、これがこの魔法書の真骨頂なのだという。この書物には地獄の悪魔たちの序列が説明されていて面白い。この書物によれば、地獄の悪魔たちの中で実権を握っているのは、 皇帝ルキフェル(Lucifer)、君主ベルザブス(Belzabuth)、大公アスタロト(Astaroth)の3人の悪魔であるらしい。その下には6人の上位の悪魔たちがいて、それぞれ宰相ルキフゲ(Lucifuge)、総司令官サタナキア(Satanachia)、司令官アグリアレプト(Agliarept)、中将フレウレティ(Fleurety)、軍曹サルガタナス(Sargatanas)、元師ネビロス(Nebiros)の名が挙げられている。つまり『レ・グラン・グリモワール』を信じるならば、ルキフゲ・ロフォカレは地獄の宰相ということになる。彼はこの世のすべての富と財宝に関する支配権を皇帝ルキフェルから与えられているという。
さらにその下には18人の悪魔の将官たちが挙げられている。それがバエル(Bael)、アガレス(Agares)、マルバス(Marbas)、プルスラス(Pruslas)、アーモン(Aamon)、バルバトス(Barbatos)、ブエル(Buer)、グソイン(Gusoyn)、ボティス(Botis)、バティム(Bathim)、フルサン(Hursan)、エリゴル(Eligor)、ロライ(Loray)、ヴァレフォル(Valefor)、ファライ(Farai)、アイペロス(Ayperos)、ナベルス(Naberus)、グロシアラボラス(Glosialabolas)で、この名前の中には、ソロモン王が使役したとされる有名な72人の悪霊たちの名前もたくさん登場している。さらにその下にもたくさんの悪魔たちがいるようだが、この書ではそれは省略されている。上位の悪霊を呼べば下位の悪霊たちは従っているからだ。ルキフゲ・ロフォカレにはバエル、アガレス、マルバスが従っているという。
悪魔役職については正直、適切な訳かどうかよく分からない。emperor、prince、grand duke、それからprime minister、great general、general、lieutenant general、sergeant、camp marshalにそれぞれ辞書の中から訳語を選んで充てている。
ルキフゲ・ロフォカレの召喚!?
ルキフゲ・ロフォカレの地獄での地位や特徴がわかったところで、地獄の宰相ルキフゲ・ロフォカレを召喚する方法について簡単にまとめてみたい。ルキフゲ・ロフォカレはなかなか召喚に応じない悪魔であるらしい。したがって、そのルキフゲ・ロフォカレを召喚する方法が記述されたこの魔法書は一部、魔術師たちの間では高く評価されているようだ。召喚の儀式をする前に断食をしたりヤギを生け贄に捧げたりといろいろと準備が必要なのだが、実践する人もいないと思うので細かい点は省略する。
野生のハシバミの枝を折ってきて「爆破の杖(blasting rod)」なるものをつくる。そして魔方陣を描くと、準備は完了だ。そしてさまざまな呪文を唱えて皇帝ルシファーに呼びかける。そうするとルキフゲ・ロフォカレが呼び出されて出てくるというが、そのやり取りがいささか芝居がかっている。簡単に訳してみると、
ルキフゲ・ロフォカレが「俺を呼び出すヤツは誰だ。俺をその杖で打って苦しめるんじゃない」と言って召喚される。「ちゃんと召喚に応じて願いを叶えてくれりゃー、打たないよ」と魔術師は言う。すると「よーし、それならば願いを言え」と交渉が開始される。そこで魔術師は「毎日、2回召喚に応じて欲しい。そして財宝を与えて欲しい。月の1日に手に入れた金貨や銀貨はお前に分けてやるから」などと図々しい要求をする。するとルキフゲ・ロフォカレも黙ってはいない。「そんな条件で応じると思うなよ。50年後に貴様の魂を寄こせ」と言い出す。しかしここでその要求に応じてはいけない。魔術師は「求めに応じないというならこうしてやる」と爆破の杖に火をつけて、悪魔が要求に応じるまで呪文を唱え続けて脅しつける。そうすると、やがてルキフゲ・ロフォカレも根をあげて降服する。「毎日2回、願いを叶えてやる。ただし貧しい者には施しをくれてやること。それからこの契約のことを口外しないこと。約束を違えたときには魂はいただくからな」と言い出すので「よし、承知した」と応じれば契約する。このようなやり取りを経て、ようやくこの悪魔との契約は成立するらしい。魔術師はそのまま財宝の在り処まで連れて行かれ、そこで手に持てるだけの財産を持ち帰ることができるのである。
悪魔のクセに、与えた富を貧しい者に分けるように約束させる点は興味深い。
光を避けるもの、ルキフゲ・ロフォカレ!?
ルキフゲ・ロフォカレの名前の由来については色々と言われている。「ルキフゲ(lucifuge)」はラテン語のlux《光》の属格lūcis(ルーキス)、fugio《避ける》に由来して、《光を避けるもの》を意味しているという。対するルキフェル(Lucifer) はlux《光》をferre《掲げる》に由来して、《光を掲げるもの》を意味しているの、ルキフゲとルキフェルは相対する存在ということになる。
「ロフォカレ(rofocale)」についても考察がなされていて、これは「フォカロル(focalor)」という別の悪霊の名前のアナグラムなのだという。特にフォカロルという悪霊が知名度があるわけでもないし、強力なわけでもないので、たまたまなのかもしれないが、何らかの関係があるのかもしれない。
ルキフゲ・ロフォカレの姿に関しては『レ・グラン・グリモワール』の中で言及されていないが、いくつか、稚拙な絵が描かれている。3本の角をはやし(2本の絵もある)、下半身がヤギのような獣の姿として描かれている。ピエロのような服を着ているのが印象的だ。これらの稚拙な絵はルキフゲ・ロフォカレが術者に財宝の在り処を示している姿なのだという。