見越し入道(ミコシニュウドウ)
[日本伝承]
見越し入道(ミコシニュウドウ)【日本語】 | |
容姿 | 大男。あるいは首の長い男性。 |
特徴 | 見上げると大きくなる。そのまま見ていると死ぬ。「見越し入道見越した」と唱えると消える。妖怪の総大将。轆轤首の男性版。 |
出典 | 『百怪図巻』、『妖怪画図百鬼夜行』、『宿直草』、『煙霞奇談』ほか |
見上げれば見上げるほどどんどん大きくなる僧侶!?
夜道を一人で坂道などを歩いていると、僧の姿をした大男が現れる。大きいなあと思って見上げれば見上げるほど、どんどん大きくなっていく。そのまま見上げていると死んでしまうという。見越し入道に飛び越されたり、見上げて後ろに倒れると、喉笛を噛み殺されるとも言う。対策としては、「見越し入道見越した」とか「見越し入道見抜いた」などと唱えると消えるという。足元から頭の方へ見上げていくと喰い殺されるので、頭から足元に向かって見下ろすと逃れられるなどと伝わっている。差し金で実際に見越し入道の高さを測ろうとすると消えるという話もある。このように、恐ろしさと一緒に、その対策も揃っているのが見越し入道の特徴である。
『宿直草』や『煙霞奇談』、『古今百物語評判』など、江戸時代の怪談本や随筆などにたくさん登場する。『煙霞奇談』では、見越し入道は熱病をもたらす疫病神とされている。善右衛門という商人は、馬に乗って移動中に4メートルほどの身長の大入道と遭遇した。大入道は恐れ慄く善右衛門を睨みつけ、そして彼を踏み越えて去って行った。その後、善右衛門は疫病に罹り、医者の介抱の甲斐なく死んでしまったという。
見越し入道の正体についてはいろいろと言われている。『宿直草』では狸が化けたものとされている。鼬(イタチ)や狐、狢(ムジナ)などが化けているとも言われる。見越し入道は提灯や桶(おけ)、舵(かじ)などを持って出没するが、その持ち物こそが見越し入道の本体で、その持ち物を叩くと退治できるという伝承もある。日本の妖怪は何かと狸や狐の仕業にされてしまうものなのだけれど、この持ち物が本体というのは珍しいパターンではある。
実は彼こそが妖怪の総大将!?
描かれる姿もいろいろである。『百怪図巻』や『化け物づくし』、『百種怪談妖物双六』などでは普通の入道のような姿で描かれている。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』では、首が長い入道が描かれている。しかし、江戸時代の多くの草双紙などでは轆轤首(ロクロクビ)のように首の長い入道として描かれることが多い。また、轆轤首と一緒に描かれていることも多く、轆轤首の男性版のような位置付けにされている。また、妖怪の総大将と言えば、ヌラリヒョンだと言う人もいるかもしれないが、実は見越し入道の方が由緒正しい妖怪の総大将だ。江戸時代の草双紙などでは、しばしば妖怪の総大将として描かれている。また、見越し入道は轆轤首との間に豆腐小僧(トウフコゾウ)というかわいらしい妖怪をもうけているとも説明される。
見越し入道の仲間たち!?
見越し入道のように、見上げるとどんどん大きくなる類いの妖怪は日本全国たくさんいる。単に見越し(ミコシ)と呼ばれることもあるが、次第高(シダイダカ)、高入道(タカニュウドウ)、高坊主(タカボウズ)、伸上り(ノビアガリ)、乗越入道(ノリコシニュウドウ)、見上げ入道(ミアゲニュウドウ)など、日本各地でさまざまな名前で呼ばれている。