ピュートーン
[ギリシア・ローマ神話]
Πύθων(ピュートーン)【古代ギリシア語】 | |
容姿 | 巨大な蛇。 |
特徴 | 古くからデルポイの神託所を守護し、神託を行っていた怪物。アポッローンに退治される。 |
出典 | アポッロドーロス『ビブリオテーケー』ほか |
古より神託所を護る蛇神!?
ピュートーンはデルポイ(Δελφοί)の山に古くから棲んでいた大蛇である。 デルポイといえば古(いにしえ)から神託所のあった場所。デルポイは昔はピュートー(Πυθώ)という名前で、大地の女神ガイア(Γαῖα)、あるいは掟の女神テミス(Θέμις)の神託所があって、ピュートーンという大蛇がこれらの女神に代わってこの地を支配していて、神託を行っていた。しばしばガイアの子とされる。
ピュートーンは予言により、レートー(Λητώ)の子によって殺されると知った。あるとき、レートーはゼウス(Ζεύς)の子を身籠った。ゼウスの正妻だったへーラー(Ήρα )はゼウスの不貞に怒り、レートーが太陽の光の下で出産することを禁じた。一方、ピュートーンも自分が殺されることを回避しようと、レートーを亡き者にしようと謀った。そこでゼウスの頼みによって海神ポセイドーン(Ποσειδῶν)はレートーをデーロス島(Δήλος)に導くと、海の水で天蓋をつくって彼女を隠して無事に出産させた。こうして生まれたのがアポッローン(Ἀπόλλων)とアルテミス(Ἄρτεμις)である。
アポッローンは生まれて3日後に弓矢を執るとデルポイにやって来て、ピュートーンを射殺したという。こうして母の恨みを晴らしたのである。ピュートーンの亡骸は、デルポイの聖なる石オムパロス(Ομφαλός)の下にある大地の裂け目に葬られ、アポッローンはピュートーンのために葬礼競技のピューティア祭(Πύθια)を開始したという。その後、アポッローンはそのまま神託所を引き継いだ。
神託所の巫女たちはピューティアー(Πυθία)と呼ばれ、トランス状態で神の言葉を伝えるが、これはピュートーンの死体から出るガスによって引き起こされているとされた。
ちなみにニシキヘビを英語でパイソン(Python)と言うが、これはピュートーンに由来している。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960年)