白粉婆(オシロイババア)

[日本伝承]

名称白粉婆(オシロイババア)【日本伝承】
容姿白粉を厚く雑に塗りたくった老婆。
特徴白粉の神に仕える従女。雪の日に酒をもらいに来る。
出典鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』ほか

白粉の神さまの従女!?

オシロイババアは顔一面に白粉(おしろい)を塗りたくった老婆の妖怪だ。白粉を分厚く、しかも乱雑に塗っているため、夜中などに出会うと非常に恐ろしいという。奈良県吉野郡十津川の流域では「白粉婆さん」などと呼ばれていて、鏡をじゃらじゃらと引きずってくるという。

鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』(1780年)には破れ笠をかぶって杖をつき、酒徳利(さけとっくり)を持って雪の中を歩く腰の曲がった老婆が描かれている。彼によれば、何でも白粉婆は白粉の神さまである脂粉仙女に仕える従女なのだというから、ずいぶんと雑な化粧をしている癖に、実は偉いのかもしれない。

紅おしろいの神を脂粉仙女と云。おしろいばゝは此神の侍女なるべし。おそろしきもの、しはす(師走)の月夜女のけはひ(化粧)とむかしよりいへり。

(鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』「雲」より)

民俗学者の藤沢衛彦は『図説民俗学全集』の中で、能登地方では白粉婆が雪の夜に酒を求めてやってくるといい、雪女の一種だと説明している。しかし、能登地方で実際にこのような伝承は確認されていないので、『今昔百鬼拾遺』から着想を得た藤沢衛彦の創作である可能性もある。

山姥(ヤマンバ)や山女(ヤマオンナ)などの山の妖怪が旅人に白粉をねだったり、酒を買いに村に下りてくるという伝承は各地に残されているため、白粉婆もその手の妖怪と関連があるのかもしれない。

《参考文献》